「島ゴルジェ」オリジネーター、TEACHIインタビュー 〜『ISLAND GORGE 2』が描きだす色鮮やかな「ゴルさ」の秘密とは?

沖縄在住、「島ゴルジェ」の提唱者であり、Juke/Footwork〜ゴルジェ〜ヒップホップを大胆にトラバースしながらトラックを多くリリースし続ける南の冒険者、TEACHI。伝統的な島嶼音楽と現代のクラブ・ミュージックがシームレス・エモーショナルに接続されたその色鮮やかなリズムとサウンドに魅了された者は多く、最近は海外のレーベルからのリリースも続いている。

そんな彼が遂に「島ゴルジェ」の続編となるEP「ISLAND GORGE 2」をリリースした。今作に籠められた彼の思いについて、話を聞いた。

243985629_242427817714174_5528802028336480104_n

▲ジャングルに佇んでトラック・メイクを行うTEACHI

 

島嶼音楽とゴルジェの関係性を浮き彫りにする「島ゴルジェ」

ー 前作「ISLAND GORGE 」がリリースされたのが2015年。いよいよその続編にあたる「ISLAND GORGE 2」がリリースされます! 今作の制作にあたって事前にコンセプトやイメージはあったのでしょうか?

TEACHI: えっ!6年も経つんですね。コンセプトは特にありませんでした。前作のリリース以降にもゴルジェを作り続けていたんですが、それをまとめたのが「ISLAND GORGE 2」です。自然と前作の世界観を引き継いだ作品になりましたね。

▲前作『ISLAND GORGE』

ー では前作と同じく「島ゴルジェ」がテーマになったということですね。あらためて「島ゴルジェ」とはどのようなものか、教えてもらえますでしょうか?

TEACHI: 一言で言うと、「島ゴルジェ」はコンプレックスの産物です(笑)。ゴルジェはネパール発祥という出自から、山岳音楽として捉えられていますよね。でも実は、僕が住んでいる沖縄などの島嶼地域にも、太鼓を使った音楽はたくさん存在しているんです! つまり、島嶼地域にも「ゴルさ」が密かに潜んでいる。しかし、それが発見されていないという課題を感じていました

ー 確かに沖縄には山や峡谷は少ないですが、その島嶼地域にも独自の「ゴルジェ」が存在すると。

TEACHI: そうそう、地域のお祭りや民謡に太鼓はかかせない存在ですしね。日本でも漁師町の祭囃子に太鼓が欠かせない存在として根付いている地域もあります。そこで僕なりに、島嶼音楽とゴルジェの関係性を浮き彫りにする必要がある思い、そこで生み出しされたのが「島ゴルジェ」。島嶼音楽をサンプリングして作っているゴルジェを「島ゴルジェ」と呼ぶようになったというわけです。

244339973_219853330129337_3913129588466989253_n

ゴルジェにより「太鼓」が「クラブミュージック」と接続した
生活がアップデートされたような高揚感があった

ー 具体的に「島ゴルジェ」はどのように制作しているんですか?

TEACHI: 僕の場合、ABLETON liveでマイクロサンプリングして曲を作っていますね。既存の音源を原曲が分からないくらい徹底的にスライス&チョップしています。あと気をつけているのが、タムでリズムトラックを作る際には極力プラグインでエフェクトをかけないようにしているんです。

ー ゴルジェ・ブーティストではタムを歪ませてハードなサウンドにするのが一つの手法となっていますが、それをあえてやっていないと。

TEACHI: そう、それとは対極にあるような音作りを意識しています。岩山や冬山のような硬質なサウンドではなく、熱帯ジャングルのようにレイヤーがくっきりして、色彩が鮮やかなサウンド。「島ゴルジェ」の肝は、タムによるリズムをそのような存在として捉えることと言えるかもしれませんね。

ー 以前、ゴルジェを「タムの再発見」と語っていましたが、やはり「タム」や「太鼓」をどのような存在として捉えるか、というところが重要なんですね。

TEACHI: そうですね、やはりゴルジェを知って「ゴルジェ耳」が開拓されるようになって、そのような考え方ができるようになったんですよね。それまでは、タムを始め「太鼓」とクラブ・カルチャーは、完全に別ものだと思っていたんですよ。一方で、僕も大学ではエイサーサークルに入部したりと太鼓が身近にある生活をしてきました。ゴルジェによってそのようなローカルでトラディショナルな生活が、クラブ音楽にアップデートされたような高揚感があったんですよ。そういう「再発見」によって音楽を新しい耳で聞けるようになったこと。それがゴルジェの一番の発明だと思っています。

244301943_219822763465272_4407308051170395003_n

琉球民謡とクラブ・ミュージックをこんなにカッコよく融合できるのか!
と衝撃を受けた

ー なるほど。ではTEACHIさんは、どのような音楽に影響を受けて今の音楽に至ったんですか?

TEACHI: 影響を受けたというと凄く膨大になってしまうので(笑)、「沖縄音楽」という観点で影響を受けた3組を紹介しますね。まずは「IN-HI(ex. INDIAN-Hi)」というパンクバンドです。東京の高円寺を拠点に沖縄出身者を中心に結成されたバンドで、90年代末から2000年代前半の沖縄インディーズ・ブームの黎明期を代表するバンドです。

ー パンクバンドとは意外ですね!

TEACHI: 僕は少し後追いなんですよね。IN-HIはパンクロックの中に突然、琉球音階のギターソロが入ってきたり、文脈関係なくウチナーグチ(沖縄の言葉)を使ったりするところがとにかく斬新で。これは、前世代の沖縄ワールド・ミュージック期に対するアンチテーゼだと思っています。IN-HIが後の沖縄のロックバンドに与えた影響は大きいと思っていて、モンゴル800、オレンジレンジ、HYなど、後のバンドが琉球音階や三線を楽曲に取り入れていったのに通じていると思いますね。

ー パンク・サウンドから琉球音階に自然と接続されていくこの感じは、確かに驚きますね。

TEACHI: ですね。そういう流れの最終形態とでもいうべきユニットがあって、「DUTY FREE SHOPP.×カクマクシャカ」なんですよ。ミクスチャーバンド「DUTY FREE SHOPP.」と、ハードコアバンドからラップへ移行した「カクマクシャカ」のコラボ名義ですね。アルバムのほとんどの曲で地元のミュージシャンをゲストとしてフックアップしていて、そういうところもカッコ良い。僕は以前から面識もあって、彼らの影響で今こうして音楽活動をしているとも言えますね。

ー なるほど。沖縄音楽とミクスチャーなサウンドが渾然一体となって非常にパワフルな音ですね。この音が持つパワーとカラフルさは「ISLAND GORGE 2」にも通じるものがありますね。

TEACHI: 最後にクラブミュージック文脈で紹介したいのが「RYUKYU UNDERGROUND」です。イギリス人のキース・ゴードンと、アメリカ人のジョン・テイラーによるユニットですね。最初に聞いたのは地元のラジオ。これで「琉球民謡とクラブ・ミュージックをこんなにカッコよく融合できるのか!」と衝撃を受けたんですよね。しかも調べていくと外国人がプロデュースしていると!  琉球民謡に対するリスペクトが凄いなと思いました。これをきっかけに琉球民謡の音源とかも聴くようになりました。偶然ですが石井さん(GORGE.INのデザインを手がけるISHII TAKAAKIRA)が前作「ISLAND GORGE」のために作ってくれたジャケットがめちゃくちゃ「RYUKYU UNDRERGROUND感」があってすごい好きなんですよね、たまたまなんですけど(笑)

ワールド・ミュージックとして消費されない、強度を持った音楽
ゴルジェにはそのような音楽にさせる強さがある

ー ここまでお話を聞いて改めててTEACHIさんにお伺いしたいのが、ゴルジェは虚実入り交じる「バーチャル・トラディショナル」な側面があります。一方、ローカルで長く正当な歴史を持ち、生活に根付いた正しくトラデイショナルな沖縄の音楽がある。これはどのように同居しているんでしょうか?

TEACHI: そうですね・・・僕は前述したIN-HIの打ち込み版みたいなことをやりたい、と常々思って楽曲を作り続けていたんですよね。「沖縄音楽」というとオリエンタルな視座で扱われ、「ワールド・ミュージック」として消費されがちなんですよ。そこには力を持つものが「辺境音楽」として文化搾取している視座が含まれてしまっていると思っていて。IN-HIの楽曲のようにワールド・ミュージックとして消費されないような、強度を持った音楽にしたいと思っています。もっとストリートな感覚を大切にしたいというか。

ー 実際、沖縄の地元のミュージシャンでもそのような「ワールド・ミュージック」としての沖縄音楽を敬遠したりする傾向はあるんですか。

TEACHI: ありますね、「沖縄」というだけで妙に商品化されて文化搾取されてしまうサイクルがある。それがそういう傾向の要因の一つかな、と思っています。

ー 一方でIN-HIの楽曲のように、沖縄音楽と現代の音楽が自然に接続して強度を保っている音楽もあると。

TEACHI: そうです。面白いのが、幸いにも「バーチャル・トラディッショナル」なGORGEは、そういう「ワールド・ミュージック」として消費されてしまう危険性をはらみつつも、そういったものを回避しているように見えるんですよね。それはゴルジェの出自に理由があると思っていて、ネパール発祥がフェイクかもしれない、正直怪しいというという「本物じゃない感」が漂っている(笑) 実はこれが、逆説的にワールドミュージックとして消費されない一線を担保している理由なのではないか、と最近はよく考えています。だから僕にとってゴルジェは、ワールド・ミュージックとして消費されることに抵抗して、沖縄音楽の強度を高める役割を果たしているものだと思います。

ー 非常に面白いですね。フェイクな歴史と本物の歴史がシームレスに接続することによって「強度」が出てきて、そういう現実と虚構が入り交じる世界に「島ゴルジェ」が存在している。その最新成果として「ISLAND GORGE 2」があると。

TEACHI: ぜひ聴いてみてください! 最後の楽曲「ALIVE + VOICE OF SILENCE – GORJUKE EDIT -」はTerminal Explosionからリリースした「VOICE OF SILENCE」に収録していた楽曲をリメイクしたものです。前4曲と雰囲気がガラッと変わって違う一面が見せられたと思います。この曲があると無いではEPの印象がだいぶ変わったかなと思っています。別バージョンが「ATOMIC BOMB COMPILATION vol.8」にも収録されているので、聴き比べてみると面白いと思います。

ー ありがとうございます。では最後にゴルジェは今度どうなると思いますか?

TEACHI: 先ほども話したような「バーチャル・トラディショナル」という強さを持っているので、消費に抵抗して生き残り、しぶとく世界に広がっていくのでは、と思っています。実際に最近、海外との交流も進んできています。GORGE.INではアルゼンチンのアートコミュニティpantanosumpfとコラボして2作品のコンピをリリースしました。そこから派生して南米を拠点としたGORGEレーベルFANGALが始動しています!これからの展開がとても楽しみです。

▲TEACHIのトラックも収録された、アルゼンチンpantanosumpfからリリースされた『pantanoGORGE – swamp version -』

 


▲日本のGORGE.INからリリースされた『pantanoGORGE – volcano version -』


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です